「Journal of Global Health」(2021)によれば、世界中の2.58%以上の成人がADHDを患っています。大学生活を送るには沢山の苦労がありますが、ADHDのような精神的な問題が重なると、社会生活、学習、仕事等、さらに複雑な日々を過ごす事となるのではないでしょうか。
注意欠陥・多動性障害やADHDに悩まされる人々の多くは、彼らの可能性を最大限に引き出し、育むための支援を必要としています。 APUの学生は特に、大学生活が慣れ親しんだ環境と大きく異なる可能性があるため、精神的な問題が生活に影響する事が多いかもしれません。また、APUに入学した時点で英語や日本語が堪能出ない学生も少なくないため、日常生活で抱える問題はとりわけ深刻なものでしょう。 そのため、APU生への精神的なサポートはより重要であると言うことが出来ます。
最近ADHDと診断されたAPM3回の学生が、現在抱える悩みを共有してくれました。睡眠時間が安定せず、24時ごろにベッドに入っても、脳の”活発化”によって眠りにつけるのは4時ごろになってしまう事が頻繁にあるそうです。彼女は今年度の抱負の1つとして睡眠の週間を修正することを掲げました。ADHDに悩む学生にとって学業と私生活の双方をバランスよく保つ中で困難に直面することはよくあり、今回のインタビューもその1つでした。彼女はきっぱり断る事を苦手としており、特に友人関係等学業以外の活動では衝動的に行動してしまうことが多いそうです。
彼女が抱えるもう1つのADHDの症状として集中力の欠如に悩まされており、課題を週末までため込んでしまう原因となっているそうです。さらに科目によって急激に興味を失ったり、集中的に意欲が高まったりと、バランスのよい学習が難しいと語りました。こうした集中力の欠如は教授による個別の支援があまり受けられなかったり、講義内容が理解しづらい場合に起こると述べました。これらの要因は彼女のセメスター全体の成績に大きな影響を与えていると言います。
APUによる障がい学習支援
上記のような学生のために、APUは包括的かつ育成的な支援を提供しています。ADHDやその他の精神的な問題を持つ学生に対して、アカデミック・オフィスが体系的な流れに沿って学業支援を提供しています。
障がいを持つ学生はアカデミック・オフィスに相談して支援を申請することができます。指定されたスタッフとの相談の後、学生には一般的な質問、現在の状況、過去の支援策、および要求される支援について話し合うためのフォームが与えられます。
フォームを入力した後、学生は必要な書類をapudss@apu.ac.jpに送付します。書類には講義や試験の特別支援サービスへの申請書、医師による診断書、カウンセラーによる書類、高校からの報告書等が含まれます。
必要な書類とフォームを受領後、で申請された支援措置の必要性や実現可能性について議論します。この審議の後、アカデミック・オフィスによって申請の結果を学生にお知らせします。
学生がこうした支援を受ける場合、アカデミック・オフィスは対応可能なスタッフを割り当て、学生が抱える講義や試験に関する問題について相談できるようにします。担当するスタッフは定期的に学生とコミュニケーションをとりながら、勉学に関する問題の解決策を提示するなど、学生が直面する困難に一緒に取り組んで行きます。
アカデミック・オフィスのあさこまいさんによると、APUでは障害のある学生の支援システムを改善し続け整備していく事を約束しています。APUは立命館大学やその他の機関での講演会等に出席したり、心理学や障がい支援の研修に参加する等して専門家の助言を得ることで最新の情報や傾向を積極的に取り入れています。こうした取り組みを通じてAPUは学生が求める最適な支援システムを整備しています。
APUの障がい学習支援センターでは、セメスターごとに支援を受ける教員や学生からのフィードバックを確認し、改善点があれば次のセメスターの支援内容に組み込みます。さらに、教職員やスタッフ向けのトレーニングセッションを実施しています。京都大学の准教授である村田淳氏による障がい学生支援のためのワークショップを開催したことが一例です。
課題
APUには上記のような障がい学習支援システムが存在するにも関わらず、多くの学生がその存在を知らない事が現状です。インタビュー答えた学生も、以前は自信の症状に対する支援を知らなかったと語りました。そのため、支援システムの認識・理解を向上させる必要があります。
また、文化や言語の違いがADHDの様なセンシティブとも捉えられるトピックについて学生間で議論を行う事を妨げており、このままでは問題があまり認識されず支援体制の確立を妨げてしまうのではないかと学生は考えています。教授がこうした問題に取り組むことを避けたり、ディスカッション等を行わないことで支援に前向きな環境がつくりづらくなる可能性があります。 ですが、インタビューに答えた学生は、多くの教授が支援に積極的であり、学生の必要に応じた支援が提供されると考えています。
新たな提案
APUをより包括的で支援に積極的な環境にするために、学生は次のように提案しました。
「各講義の初回授業時に、教授が障がいを持つ学生に提供される支援の概要を説明するべきです。簡単な説明であっても、心強く感じられます。また、ポスターやキャンパスターミナル、Moodle等による掲示を通して私たちのような学生のための支援システムの存在の認識を広める必要があると考えます。さらに障がい学生支援についての対話が増えることが理想です。」
Moodle上に障がい学習支援に関するURLを掲載し、学生にアクセスを促す事は非常に有益だと考えられます。また、アカデミック・オフィスとサークル等が協力して精神的な障がいを持つ学生の認識を高めることで、学内全体の支援環境を向上指せることが出来ます。精神的な問題を抱える学生のためにイベントを主催し、彼らが如何にして困難を乗り越えるか、という経験談を共有する場を提供したり、そうした新たな試みに関するポスターを作成することで実現できるのではないでしょうか。
おわりに
ADHDは他の知的障がい等と同様に1日で解決・治癒されるものではありませんが、そうした問題に悩む人々の”環境”を変える事で彼らが少しでも快適に過ごすことが出来ます。また、全ての大学がADHDを患う学生が学び、成長する事が出来る環境作りを目指すべきであると考えます。APUでは積極的な支援活動が行われていますが、学生、教職員間の認識に差が出ることの無い様、工夫が必要です。こうした取り組みによって、精神的な障がいに悩む学生の可能性を最大限に引き出し、育むことが出来るのではないでしょうか。
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