リサ・カヤスタ 著
マリア・エリザベス・トーマスさん(APS4回生、インド出身)は、別府のLGBTQ+コミュニティを印象的に描いた作品で、Swadesh DeRoy記念奨学金を受賞しました。この奨学金は、日本外国特派員協会が主催するもので、優れたメディア作品に贈られるものです。マリアさんは、クィアのシスジェンダー女性として、別府のドラァグクイーンやトランス女性、フェミニンなファッションに身を包んだ男性、クィアのラブストーリーなどを写真に収めてきました。彼女は、受賞の経験を「人生を変えるもの」と表現しています。この記事では、写真を撮り始めてから奨学金を獲得するまでの道のりを詳しく紹介していきます。
写真の旅の始まり
マリアさんが写真を始めたのは、16歳のときでした。当時はポラロイドカメラ(現代で言うチェキカメラ)が流行していました。彼女は父親にポラロイドカメラを買ってくれるよう頼んでいましたが、かなり高価なものでした。とうとう両親を説得するとポラロイドかメラを買ってもらい、趣味としての写真の旅が始まりました。彼女は友人や家族の様子をポラロイドカメラで記録していました。 その後、来日後彼女は使い捨てカメラと出会いました。当時は大きなカメラを買うお金がなかったため、使い捨てカメラを買っては旅先で風景写真を撮っていました。「ポートレート写真を撮ることは、見栄えを良くすることで人々を期待させ、プレッシャーが大きいので怖かったのですが、風景写真なら簡単に撮れるような気がしました。」
写真家としての最初の大きな一歩
彼女が写真家としての真の才能を発揮したのは、2020年にピーター・マンテロ教授のMedia production labという授業を受けた時でした。この授業では、APUのメディア学部からカメラを借りることができました。当時、マリアさんは一つの課題に取り組んでいました。その課題とは、自分が情熱を傾けていることについて独自の写真シリーズを作り、それを最終プロジェクトとして発表するというものでした。
マリアさんはクラスの最終課題として、奨学金に応募するのに十分なレベルの写真を撮影しました。豪華な機材を持っているわけではなく、特に期待もせずに応募しました。そして、3月の末に彼女の受賞が発表されました。
奨学金を得たとき彼女はショックと信じられない気持ち、そして達成感に包まれました。彼女はこのために努力してきたことを知っていましたし、自分が良いと思っているのは独りよがりなのか、それとも彼女の写真が実際に良いのかわからなかったので、自己肯定感がありました。
「自分を認めてもらえた 。」というのは良い気分でした。
この経験は、彼女の両親の奨学金に対する認識も変えました。彼らは、奨学金は学業成績だけに報いるものだと思っていましたが、それだけではないことを知りました。娘がこのような大きな賞を受賞したことは、両親にとって間違いなく誇らしい瞬間でした。
マリアさんは、両親の反応を「友達に謙遜して自慢していました。」と語った。
奨学金を得たことで、彼女はようやく貯蓄を持つことができました。卒業後の将来に備えることができ、経済的な自立を実感しているというマリアさん。日本に来る前は、学生ローンを組んだり、父親の援助を受けたりしていました。
「私は、父に必要以上の仕事をさせているのではないかと、負い目を感じていました。私は父に休みをあげたいと思っていましたが、父には休みがありませんでした。だから、今は父を安心させてあげられることが一番の喜びです。」
現在、マリアさんはソーシャルメディアやマーケティングの分野で多くのインターンシップを経験しており、将来はこの分野で活躍したいと考えています。彼女の理想の仕事は、フリーランスのフォトグラファーとして、LGBTQ+コミュニティだけでなく、社会から取り残されたコミュニティのために、メディア企業で働くことです。
「日本で写真業界に参入するのは、特に外国人や女性にとってはとても難しいことですが、私はそれを可能にしたいと思っています。写真は、人々が代表されていると感じられるメディアであってほしいと思っています。
彼女は、今年撮影したすべての写真を再び奨学金に応募したいと考えています。もし受賞できたら、より良い機材を購入し、旅行の資金にしたいと考えています。
「私が興味を持っているLGBTQ+のコミュニティのためにもっと写真を撮れるように、他の都市にも足を伸ばすべきだと思います。」
彼女の撮影プロセスを歩く
マリアさんの代表的な写真シリーズに、別府のスナックでのモノクロ写真シリーズがあります。 彼女は、2020年の1月に友人の一人からそのスナックの存在を知りました。「スナックの中はとてもリラックスした雰囲気でした。外には大きな明るいネオンサインがあり、このバーにはウェブサイトもあります。だから、怪しい店ではありません。」とマリアさんは店内の様子を語ってくれました。
(Photo: Inside the snack bar)
このバーには、収入が伸び悩んだために母国での仕事を辞めた世界中のトランス女性が集まっていました。彼女たちは現在、別府でキャバレーのダンサーとして働いています。彼女は、彼女たちのパフォーマンスを撮影するつもりで行ったのですが、最終的にはバーのオーナーにバックステージに入る許可をもらいました。すると、店主は「いいよ。」と言ってくれ、舞台裏に入ってダンサーたちの準備の様子を撮影することができました。
「彼らはとてもオープンでした。これは、私が気づいたクィアコミュニティの特徴のひとつで、彼らは自分たちに興味を持っている外部の人たちをとてもオープンに受け入れています。」とマリアさんは言います。
この経験から、LGBTQIA+のコミュニティはとても寛容であることを実感し、自信を持つことができました。
このプロジェクトの目的は、人々の生活を記録し、彼らのストーリーを伝えることです。彼女は、この国のほとんどの人々がこのような生活を送っており、それが美しく、カラフルであることを伝えたかったのです。
「意図的にすべての写真をモノクロにしたのは、カラーである必要がないほど、それぞれの人の個性が強く表れているからです。人をモノクロで撮影することには繊細な美しさがあり、被写体が自分自身を語ってくれます。」
教訓
人生で何かを勝ち取ったり達成したりした人は皆、普通の人には見えない苦労や障害を経験しています。功績はそれだけで得られるものではなく、経験や教訓が伴っています。同様に、マリアさんは奨学金を獲得しただけではなく、貴重な教訓を学び、自信を得て、写真における創造性を前向きに捉えられるようになったのです。
「豪華な機材がなくても、自分で写真を撮る手段がなくても、それを恥じる必要はありません。それが障害になったり、創造性を妨げたりしてはいけません。自分のアイデアとそれを実行する能力を信じることが大切です。そうすれば、助けは自ずと得られるものです。」とマリアさんは言います。
マリアさんは、人々の生活を記録し続けたいと考えています。彼女は自分のオンラインポートフォリオを作成し、人々が彼女の写真をチェックしたり、彼女にアポイントメントを取ったりできるようにしました。現在、彼女はドキュメンタリースタイルのポートレート写真を専門としており、誰でも撮影予約をすることができます。
マリアさんがこれまでの歩みと功績を紹介してくれたことに心から感謝します。
マリアさんについてもっと知る:
Mariaさんのインスタグラム: @mariaandhercamera
オンラインポートフォリオのリンク: https://mannatom6.wixsite.com/mariaelizabeththomas
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